アルバムと打順

CDを買わなくなった。

大阪に引っ越してくるときに、当時所持していた400枚くらいを全て売った。

それからというもの、やはりアルバム単位で音楽を聴くということが本当に少なくなった。

毎日毎日、良いアルバムを探し求めていたのが嘘みたいだ。

本を読む時間が増えたという理由もある。

そんなに器用ではないから、本を読みながら音楽を聴くことが出来ない。

どうしても音楽の情報に気を取られてしまい本の内容が頭に入らない。

そもそも音楽がなかったって入らないことが多い。

 

それでもやはり自分の好きなアルバムを聴く時間というものをたまに設けたりする。

今まで1000枚くらい聴いて心に残っているものなんて30枚、多く見積もって50枚くらいだと思う。

50枚もあれば十分だとは思わないでもないけれども、やはりあとの950枚は何だったんだろうと思うこともある。

たぶんその950枚の中にも今改めて聴き直すと心に残るアルバムもきっとあるのだろうけれど、こればっかりはタイミングであり運命みたいなもので、縁がなかったと思う。

縁があればまた向こうからやってくるだろう。

 

好きなアルバムを改めて聴いていると、ふと気づくことがあった。

どのアルバムにも、2曲目、もっと言えば1曲目から2曲目までの流れで心を惹きつけられている。

1曲目が最高な曲で、あとは何も心に残らない出オチみたいなアルバムはいっぱいあった。

950枚のうちそのパターンも非常に多かったように思う。

そうなるとやはり2曲目の立ち振る舞いというものが自分の中でかなり重要になっていると気づいた。

1曲目と同じ雰囲気で続く。趣向を変える。少し落ち着かせる。急に加速させる。

とにかく1曲目でつかんだ流れを離さないことが2曲目に求められる。

(勝手に求めている。)

 

これはつまり野球の打順と同じなのだ。

1番バッターが球数を稼いで出塁しても、2番バッターが何も考えずに初級からセカンドフライを打ちあげたら何の意味もない。

1番バッターが単打しか打てなくても、2番バッターが長打率が高ければホームに帰ってこれる可能性は高くなる。

アルバムというのは打順だ。

そう考えると、好きなアルバムの楽しみ方が増えてもっと好きになった。

 

個人的に一番好きな1曲目から2曲目の流れは、The Zombiesの超究極最高名盤、

「Odessey and Oracle」。

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1曲目の「Care Of Cell 44」はThe U.Kという趣で、これでもかというくらいポップなんだけれどどこか影がある。

「ああ、これからアルバムが始まるんだ」と、いつ聴いてもワクワクしてしまう。

初回から先頭打者が2ベースで出塁したくらいのワクワク。

次の2番バッターはどうするか。

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2曲目、「A Rose For Emily」。

1曲目のあのキラキラワクワクポップスから一転、このピアノとコーラスワークで押し切る感じ。

激シブ。

7球目くらいでセカンドゴロの進塁打とでも言うような。

1アウト3塁が一番得点が入る気がしてしまう。

そんな理想的な2曲目。

2曲目以外には居場所がないような美しい曲。

 

もちろん 「Odessey and Oracle」全体でもジャケットも含めて言わずもがなのパーフェクトな名盤なのだけれど、やはり最大の魅力はこの1曲目2曲目の流れの美しさにあると思う。

音楽にはまだ色々な楽しみ方があっていい。