太田光はカッコいい
去年の年末くらいから、「爆笑問題カーボーイ」を毎週聴くようになった。
生まれも育ちも関西カルチャーの人間にとって、爆笑問題というのはとても難しい存在のように思う。
間違いなく大物芸人だし、「あの芸歴でテレビでもポジション確立しているのに新ネタをやり続けていてすごい」的な一歩引いた変な客観的目線の評価をしてしまう存在。
主観的に「おもろいよな」と友達と語り合う存在ではないように思う。
少なくとも個人的なこれまでの人生においてそういう存在ではなかった。
生放送でいつも暴れる左翼芸の人間と、実は本当にヤバいと言われている人間のコンビ、というのが長年の個人的印象だった。
そんな爆笑問題、もっと言えば太田光についての印象が変わってきたのは間違いなく神田松之丞(現:伯山)と鬼越トマホークによるところが非常に大きい。
一回り以上下の芸人にめちゃくちゃにイジられる。
ラジオに鬼越トマホークを呼んで、27時間テレビで坂井が太田の首を絞めたことについて「殺そうと思った」「(スベり続けてたから)殺してあげたほうが良いと思った」と言い、それを聴いて「ガハハ」と爆笑する太田光にとてつもないカッコよさを感じてしまった。
それから太田光という人間に興味を持ち、「爆笑問題カーボーイ」を聴くようになった。
本当に不謹慎な話で自分の良心を疑ってしまうが、「爆笑問題カーボーイ」で一番聴き応えを感じるのは、近しい人間が亡くなった際に太田光が語るその人とのエピソードや人となりについての語りである。
感情が込もっているが感傷的になることなく、ある意味で淡々としている。
「この人は本当に人間のことが大好きで信じているんだな」と感じる瞬間である。
これまで太田光の社会的発言などを聴いても、ひねくれ者の逆張りとしか捉えられなかったが、「爆笑問題カーボーイ」を聴き始めることによって、良くも悪くも芯からヒューマニストなんだと思うようになった。
なぜ今こんなに太田光について書きたくなったかというと、ちょうど今週の「爆笑問題カーボーイ」で、ハっとする瞬間はあったからだ。
冒頭のフリートークで、「快傑えみちゃんねる」の終了について語っていた。
コロナの影響で客入れが出来なくなり、番組へのモチベーションが持てなくなったことが番組終了最大の原因と上沼恵美子本人が言っていることについて、「俺も上沼さんの言ってることわかるんだよ」と共感を言葉にしていた。
番組に客がいないということ、そのことが演者の心境にどのように影響するかということは、我々のような一般人には到底想像がつかない。
想像がつかないから、コロナ云々は番組を終わらせたい都合の良い口実だと言ってしまう。
共感が出来ない。
でも共感を言葉にすることで、共感する人間がいるという事実が出来た。
共感は出来ないけれど、共感する人間がいる事実があるというのは非常に大きなことだ。
物事への視点が広がる。
そのことは今のこの感情にまで論理的倫理的正しさを求める超ウルトラハイパー正義社会において一番必要なことのように思う。
太田光はカッコいい。